死刑選択基準に関する研究

 死刑は、刑事学の研究者にとって、刑事制裁全体の構想だけにとどまらず、学問上の姿勢まで問いかける重要なテーマです。

 死刑について、的確に議論を行うためには、どのように死刑が用いられているのか、すなわちいかなる場合に死刑が選択されているのかを明らかにする必要があります。

 このような観点から、死刑選択基準の現状を分析することに力を注いできました。

 光市事件等いくつかの事件で、死刑か無期懲役かが争われたこともあって、最近、これまでにないほど、死刑選択基準に関心が集まっています。この背景には、従来よりも犯罪被害者に関心が払われるようになったことと、裁判員裁判が実施されるようになって、法律家ではない国民にとっても死刑選択基準が重要かつ深刻な問題となってきたことなどがあると思われます。

 死刑選択基準の現状についての理解を深めることが裁判員裁判における適切な量刑のために役立つことを願ってやみません。

 死刑選択基準に関する事件は、いずれも結果が重大で、目を覆いたくなるものばかりです。被害者の方々は、講学上の教室設例における記号ではなく、家族があり、友人らとの人間関係があるかけがえのない人たちです。研究においては、この点を決して忘れることなく、学問的見地から、事件を分析し、評価することを心掛けてきました。しかし、御遺族にとっては、事件の分析及び評価それ自体が不快の念を抱かせてしまうこととなってしまったかもしれず、伏して御海容を賜るほかありません。痛ましい事件の犠牲となられた被害者の方々に哀悼の意を表します。


【これまでに公表した主な研究成果】

・裁判員裁判における死刑選択基準

 従来の死刑選択基準を踏まえて裁判員裁判における死刑選択基準のあり方について検討。

  →「裁判員裁判における死刑選択基準」福井厚編著『死刑と向きあう裁判員のために』(現代人文社、2011)37頁以下 など

・明治初期の死刑選択基準

 明治初期の京都府における死刑判決を総覧し、死刑宣告の傾向を分析。

  →「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(1)」関西大学法学論集71巻1号(2021)1頁以下

    *「2021年の歴史学界――回顧と展望――」史学雑誌131編5号(2022)156頁で紹介いただきました。

   「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(2)」関西大学法学論集72巻6号(2023)32頁以下

   「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(3)」関西大学法学論集73巻1号(2023)1頁以下

   「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(4)」出稿済

   「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(5)」脱稿済

   「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(6)」脱稿済

   「明治初期の死刑宣告の動向――京都府史登載の全死刑宣告事件を素材に――(7・完)」脱稿済


【個別の事件に対する識者談話等の新聞掲載】

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